はじめに
「この木を見たら○○地方」 が一目で分かる、 地域特性の強い樹木を厳選した記事。 日本全国にあるスギ・ヒノキ・サクラ・ケヤキ・イチョウ・ハナミズキ などの 全国分散型は除外 し、 「ほぼその地域でしか自生しない」 または 「特定地方の景観の主役になっている」 樹木 28種を集めた。 北の針葉樹 (エゾマツ・トドマツ) から、 沖縄の亜熱帯植物 (ガジュマル・ヒカゲヘゴ・マングローブ) まで、 日本列島を縦断するように並べている。
写真は Wikimedia Commons より (CC-BY-SA / Public Domain)。 分布図は記事用に作成した簡易タイルマップで、 47都道府県のうち 赤=主要分布県 / 茶=周縁分布県 / 灰=分布なし で塗り分けている。 詳しい分布図はそれぞれの Wikipedia 記事をご参照ください。
日本の植生帯 (俯瞰)
日本は南北に長いので、 大きく 針葉樹林帯 (北海道) → 夏緑樹林帯 (東北・本州中部) → 照葉樹林帯 (関東以南〜九州) → 亜熱帯多雨林 (沖縄) の4帯に分かれる。 個別の樹種はこの4帯のどこかに「強く偏って」 分布しており、 後述する28種の分布マップを上の図と見比べると傾向が掴みやすい。
載せた28種 (北から南へ)
北海道 (5種)
エゾマツ (蝦夷松 / *Picea jezoensis*) — 北海道のみ

樹高40mに達する北海道の代表的な針葉樹。 北海道の木に指定されている。 千島列島・樺太・北海道に分布し、 本州にはほぼ自生しない (本州中部以北の高山にわずかにある程度)。 木材としては防音性が高くピアノの響板にも使われる。
判別ポイント: 葉先が 尖り、 枝先は 下向き (「もうええぞ(エゾ)」 と覚える)。 トドマツは葉先が丸く枝が上向き、 という対比で見分ける。
トドマツ (椴松 / *Abies sachalinensis*) — 北海道のみ

エゾマツと並ぶ北海道の針葉樹。 北海道で 一番多く造林されている 樹種で、 低地から高地まで広く分布。 知床五湖の湖畔林などで象徴的に見られる。
判別ポイント: 葉先が 丸く、 枝先は 上向き (「天まで届(トド)け」 と覚える)。 葉裏には2本の白い気孔線が並ぶ。
ナナカマド (七竈 / *Sorbus commixta*) — 北海道全域の街路樹No.1

北海道の街路樹で 最も多く植えられている樹種。 秋に真っ赤に紅葉する葉と房状の実が札幌・小樽の街並みを染める。 寒冷地に強く、 本州でも植えられるが、 街路樹として「ザ・北海道」 の景観を作るのはここ。
判別ポイント: 羽状複葉 (1本の軸に小葉が9〜13枚並ぶ)。 秋に 房状の真っ赤な実 がぶら下がる。 紅葉も真紅。 冬に実だけ残るのも特徴。
ハマナス (浜茄子 / *Rosa rugosa*) — 北海道〜東北日本海側の海岸

海岸の砂浜に咲くバラ科の低木。 北海道の道花にも指定されており、 「♪知床の岬に〜」 で歌われた野生のバラ。 北海道〜東北日本海側 (鳥取砂丘も自生南限) の海岸でほぼ独占的に見られ、 太平洋側の暖かい海岸にはない。
判別ポイント: 砂浜に生えるトゲのある低木で、 夏に 濃いピンクの大きな花、 秋にトマトのような 赤いローズヒップ。 葉は表面にしわが多く、 触るとざらざら。
ライラック (リラ) (*Syringa vulgaris*) — 札幌の街路樹

ヨーロッパ原産だが、 札幌の街路樹として広く植えられ、 「札幌の木」 に指定されている。 5月下旬の開花期に「リラ冷え」 と呼ばれる寒波が訪れる気象現象が札幌の風物詩で、 大通公園のライラックまつりは札幌の春の象徴。 本州ではほぼ街路樹として見ない。
判別ポイント: 5月下旬に 薄紫または白の小花が房状 に咲き、 強い甘い香りを放つ。 葉はハート型。 これが街路樹で並んでいたら札幌・函館の可能性大。
高原・信州 (2種)
シラカバ (シラカンバ) (白樺 / *Betula platyphylla*) — 北海道全域 + 長野・本州中部の高原

「高原の白い貴公子」 と呼ばれる落葉広葉樹。 北海道では低地から海抜700mまで、 本州では福井・岐阜・静岡より北の標高600〜1600mの高原帯にのみ自生する。 つまり 本州では「高原リゾート」 とほぼ同義。 長野県の県木でもあり、 軽井沢・霧ヶ峰・蓼科の景観の主役。
判別ポイント: 一目で分かる 真っ白な樹皮 と、 横方向に走る黒い筋。 葉は三角形に近いハート型。 これが森に並んでいれば北海道か高原。
カラマツ (落葉松 / *Larix kaempferi*) — 長野原産・北海道戦後人工林

日本の固有針葉樹で 唯一の落葉樹。 自生地は中部山岳 (主に長野県) で、 信州の標高1000〜2500m地帯で純林を形成する。 戦後、 北海道で大規模に植林されて全国カラマツ人工林102万haのうち北海道が46万ha・長野が原産地として50%を占める。 黄葉が美しい。
判別ポイント: 針葉樹なのに 秋に葉が黄色く色づいて落葉する (常緑のマツ類とは正反対)。 短い針葉が 束で20〜40本 渦巻き状に出る。 冬は丸裸の細い梢が並ぶ独特の景観。
高山帯 (1種)
ハイマツ (這松 / *Pinus pumila*) — 中部山岳・北海道高山帯の森林限界

森林限界より上にだけ生える這うように地を這うマツ。 中部山岳 (北アルプス・南アルプス・八ヶ岳)、 富士山、 東北の高峰、 北海道の大雪山系などの 標高2500m以上で群落を作る。 「ハイマツ帯」 と呼ばれる景観そのもの。 山岳写真でしばしば見る低い緑のマット状植生がこれ。
判別ポイント: 立たず 地を這う。 高さは膝〜腰ほどしかなく、 群落全体が緑のマット状に広がる。 ライチョウが住む環境。 これが見える写真なら間違いなく標高2500m以上。
東北・北陸 (3種)
ブナ (橅 / *Fagus crenata*) — 東北日本海側・白神山地が代表

東北の日本海側に純林を形成する落葉広葉樹。 白神山地 (青森・秋田) は世界遺産にも登録された極相ブナ林で、 東アジア最大規模。 北限は北海道渡島半島の黒松内、 南限は鹿児島県大隅半島の高隈山。 写真は新潟県十日町市の美人林。
判別ポイント: 樹皮が 灰白色でツルツルした肌、 地衣類が斑点状についていることが多い。 葉は楕円形で縁が波状。 純林は林床が明るく、 「美人林」 のように一本一本が均一に立ち並ぶ。
ヒバ/アテ (青森ヒバ・能登アテ / *Thujopsis dolabrata* var. *hondae* = ヒノキアスナロ) — 青森・下北半島 + 石川・能登半島

植物学的には同じ「ヒノキアスナロ」 だが、 産地ごとにブランド名が分かれる珍しい樹種。 青森では「青森ヒバ」 として下北半島の天然林が日本三大美林の一つ、 石川では「能登アテ」 として石川県木にも指定。 木材は ヒノキチオール を多く含み、 防虫・防腐性に優れる。
判別ポイント: ヒノキに似た 鱗状の葉 だが、 葉の裏に 白く大きな気孔帯 が「Y字」 や「W字」 状にくっきり見えるのがアスナロ系の決定打。
ユキツバキ (雪椿 / *Camellia japonica* var. *decumbens*) — 新潟・福島会津・北陸日本海側 (豪雪地帯)

ヤブツバキの 雪国適応型変種。 枝が地面に這うように寝るので、 重い雪に押し潰されても折れない。 新潟県の県木で、 福島会津・北陸日本海側など豪雪地帯の里山でほぼ独占的に見られる。 雪が積もらない太平洋側にはない。
判別ポイント: 普通のツバキより 背が低く枝が横に寝ている。 花は鮮やかな赤で、 ヤブツバキより花期が遅め (4〜5月、 雪解け後)。 雪深い里山の林床に群生していたら本種。
中部 (1種)
ハナノキ (花の木 / *Acer pycnanthum*) — 愛知・岐阜・長野 のごく狭い湿地のみ (絶滅危惧IB類)

春に 真っ赤な小花 を咲かせるカエデの仲間。 自生地は愛知・岐阜・長野の県境付近、 中津川市・恵那市のごく一部の湿地に限られる 絶滅危惧種 で、 国の天然記念物。 愛知県の木にも指定されている。 街路樹として植えられたものは各地にあるが、 自生は本当にここだけ。
判別ポイント: 葉が出る前に枝先に真っ赤な花 がびっしり咲く (3月下旬〜4月)。 葉は浅い3裂のカエデ形で、 秋は紅葉も真紅。 「赤い花のカエデ」 という時点でほぼ確定。
近畿 (2種)
ウバメガシ (姥目樫 / *Quercus phillyraeoides*) — 和歌山・紀州海岸 (備長炭の原料)

常緑のカシ類。 海岸の崖など過酷な環境で群落を作る。 和歌山県の県木で、 紀州備長炭の原料 として有名。 紀州・四国南部・西日本の海岸沿いで見られるが、 「ウバメガシの森 = 紀州」 という印象が強い。
判別ポイント: 葉は 小さく厚く、 ふちは波打って内側に巻く。 他のカシより葉が一回り小さい。 海岸の岩場・崖でこんもり丸く茂っていれば本種。
モウソウチク (孟宗竹) (*Phyllostachys edulis*) — 京都・関西の里山

中国原産だが日本では京都・大阪・滋賀の里山に広く植えられ、 嵐山・鞍馬の竹林 で京都の象徴的景観を作っている。 太い幹と大きなタケノコが特徴で、 京都を中心とする関西は日本一のタケノコ産地。 関東以北では細いマダケや矮性のメダケが優勢で、 こんなに太いタケはまず見ない。
判別ポイント: 直径 10〜20cm の極太の竹。 節間が短く、 節は 1段リング (マダケは2段)。 若い幹は粉を吹いたような白っぽい青緑色。 嵐山サイズの「人より太い竹」 は本種確定。
中国 (2種)
ダイセンキャラボク (大山伽羅木 / *Taxus cuspidata* var. *nana*) — 鳥取・大山頂上付近のみ

イチイの高山型変種で、 鳥取県の大山 (だいせん) 山頂部 にのみ自生する。 標高1000m以上で純林を形成し、 国の特別天然記念物に指定。 鳥取県の木でもある。 樹高は低いが樹齢は数百年クラスのものも多く、 大山の山頂景観そのものを形作っている。
判別ポイント: 高さ 1〜3m ほどで、 親種のイチイより低く横に広がる。 葉は密に螺旋状につき、 秋に 赤いゼリー状の仮種皮 (中の種は猛毒)。 大山の高所でこんもりした緑のドームがあれば本種。
アカマツ (銘産地) (赤松 / *Pinus densiflora*) — 中国地方の内陸 (岡山・山口・鳥取)

アカマツ自体は全国に分布するが、 岡山県・山口県の県木 で、 鳥取の「大山松」 など中国地方が伝統的な銘産地。 瀬戸内沿岸の「はげ山」 の二次林として広がった経緯があり、 マツタケ採集地としても中国地方が一大産地。 内陸の尾根筋でアカマツの林を見たら中国地方率が高い。
判別ポイント: 樹皮が オレンジ色に近い赤褐色 で、 上部ほど鮮やか (クロマツは黒灰色)。 葉は 2本束 で柔らかく、 触ってもチクリと感じにくい (クロマツは硬く痛い)。
四国 (2種)
オリーブ (*Olea europaea*) — 香川・小豆島中心

地中海原産だが、 1908年に小豆島で日本初の栽培に成功。 以来、 小豆島=オリーブ の関係が定着し、 香川県の県木にも指定された。 国内のオリーブ栽培は今でも香川県が圧倒的シェアで、 海岸近くの段々畑にオリーブ並木が広がる景観は完全に「香川オリジナル」。
判別ポイント: 葉は 細長い楕円で表は灰緑、 裏は銀白色。 風で裏返ると一気にシルバーに見えるのが特徴。 海近くの段々畑にこの色の並木があれば小豆島。
ヤマモモ (山桃 / *Morella rubra*) — 徳島・四国・西日本の照葉樹

徳島県の県木。 四国・九州・西日本の山地に多い常緑樹で、 初夏に赤い実をつける。 高知では街路樹としても採用され、 四国を象徴する樹木の一つ。 寒冷地の本州中北部・北海道にはまったくないので、 北日本の人にとっては「未知の果実」。
判別ポイント: 6〜7月に 直径1〜2cmの濃紅色〜紫色の実 をびっしりつける (生食可、 甘酸っぱい)。 葉は細長い楕円で厚い。 街路樹で初夏に道路が赤く染まったらこれ。
九州 (4種)
蒲生のクス (クスノキ巨木) (楠 / *Cinnamomum camphora*) — 鹿児島・大隅半島

クスノキ自体は西日本・九州に広く分布するが、 「巨木」 となると鹿児島・大隅半島が圧倒。 写真は姶良市の 蒲生のクス (蒲生の大楠)、 幹回り24.2m・樹齢約1500年で、 環境庁により 日本最大の巨木 と認定されている (国の特別天然記念物)。 兵庫・佐賀・熊本・鹿児島が県木にクスノキを選ぶなど、 西日本=クスノキ文化圏。
判別ポイント: 葉を ちぎると樟脳の強い香り がする。 葉脈は基部から3本に分かれる「3行脈」 が特徴。 鎮守の森でこの香りがして幹回りが太い古木があれば本種。
アコウ (赤秀 / *Ficus superba* var. *japonica*) — 九州南部・四国南岸の海岸 (本土の北限種)

ガジュマルと同じイチジク属の常緑高木。 気根を下ろす樹形 はガジュマルそっくりだが、 こちらは本土まで北上していて、 熊本・宮崎・鹿児島・高知の海岸線、 さらには紀伊半島南端、 兵庫淡路島の南部までが自生北限。 暖かい黒潮の流れる海岸で集落の神木になっていることが多い。
判別ポイント: ガジュマル似の 太い気根 を多数下ろすが、 葉はガジュマルより 大きく長楕円、 表面のツヤが強い。 本土の海岸沿いで巨木が気根を伸ばしていれば本種。
タブノキ (椨 / *Machilus thunbergii*) — 西日本〜九州の照葉樹林・神社林

クスノキ科の常緑高木で、 西日本・九州の 照葉樹林帯の主役。 神社の鎮守の森や海岸の防風林でよく植えられており、 各地に巨木の天然記念物がある。 北限は青森南部だが、 太い大木に出会えるのは西日本〜九州ならでは。
判別ポイント: クスノキ科だが 樟脳の香りはない。 葉は厚く長楕円で、 新芽が 赤褐色 に染まる (4〜5月)。 鎮守の森で巨木があり、 葉に香りがなければタブノキ寄り。
スダジイ (シイ) (椎 / *Castanopsis sieboldii*) — 西日本〜九州の照葉樹林

ブナ科の常緑高木で、 西日本・九州の照葉樹林の代表種。 鎮守の森でしばしば巨木化し、 「シイの森」 と呼ばれる原生に近い林は熊本・宮崎・鹿児島・高知に残る。 「西日本の山に入って巨木があったらまずシイかタブ」 と言えるくらい、 西日本=シイ・タブ文化圏。
判別ポイント: 葉は 裏が金色〜銀白色 に光る (タブノキは裏も緑寄り)。 樹皮は 縦に深く裂ける (タブは比較的滑らか)。 9〜10月に小型のドングリ (殻斗ごと食用可) をつける。
沖縄・南西諸島 (5種)
リュウキュウマツ (琉球松 / *Pinus luchuensis*) — 沖縄・トカラ列島以南

沖縄県の木。 トカラ列島以南の南西諸島にのみ分布する固有種で、 古くから防風林・防潮林として植えられてきた。 沖縄の海岸景観で「松」 と言えばこの木。 国頭村などに巨木が残る。
判別ポイント: 本土のアカマツ・クロマツより 針葉が細く長く垂れ下がる。 樹皮はアカマツに近い赤褐色。 沖縄でマツを見たら自動的に本種。
フクギ (福木 / *Garcinia subelliptica*) — 沖縄の屋敷林

沖縄の伝統的な 屋敷林 として植えられてきた常緑樹。 写真は本部町備瀬のフクギ並木で観光名所にもなっている。 葉が厚く塩風に強いので、 台風から集落を守る防風林として最適だった。 本土ではまず見ない。
判別ポイント: 葉は 厚く硬く、 楕円で対生 (枝の両側に対になって出る)。 集落の周りを生垣のように並んでいたら本種で間違いなし。
ガジュマル (榕樹 / *Ficus microcarpa*) — 屋久島・種子島以南

クワ科イチジク属。 気根 (空中から地面に垂れ下がる根) を多数下ろす独特の樹形が特徴。 沖縄では「キジムナー (赤い髪の精霊)」 が住むと言われ、 集落の御嶽 (うたき) の御神木にもなっている。 北限は屋久島・種子島で、 本州ではどこにも自生しない。
判別ポイント: 樹形が 何本もの幹が絡み合ったような複雑な形 で、 上から多数の気根が下りて地面に根を張る。 葉は小ぶり (3〜5cm) で光沢があり、 アコウより一回り小さい。
ヒカゲヘゴ (日陰桫欏 / *Cyathea lepifera*) — 奄美大島以南

木性シダ。 シダなのに10m以上に成長する「シダの木」。 奄美・沖縄・西表の山中で見ることができ、 林床に群生する姿は完全に「ジュラシックパーク」 そのもの。 本土の植生からはまったく想像できない姿で、 南西諸島が亜熱帯であることを最も雄弁に語る樹木。
判別ポイント: 細く高い幹の先に 巨大なシダの葉が放射状に広がる ヤシ風シルエット。 幹に古い葉痕が黒い斑点状に並ぶのが特徴。 本土では絶対にお目にかかれない姿。
マングローブ (オヒルギ・メヒルギ・ヤエヤマヒルギ) — 沖縄・鹿児島南部

海水と淡水が混ざる 汽水域 に成立する潮間帯の森。 西表島・石垣島・沖縄本島・奄美大島・鹿児島南部の河口で見られる。 世界最北のマングローブ林は鹿児島市喜入 (きいれ) にあり、 ここがメヒルギの北限となっている。
判別ポイント: 河口の汽水域で タコの足のような支柱根 (ヤエヤマヒルギ) や タケノコ状の呼吸根 (オヒルギ) を伸ばしているのが本種類。 「水に浸かりながら立っている森」 という時点で日本では沖縄〜鹿児島南部確定。
植生帯の境界線
日本の植生は北から南へ大きく 針葉樹林 → 夏緑樹林 (落葉広葉樹) → 照葉樹林 (常緑広葉樹) → 亜熱帯多雨林 の4帯に分かれる。 樹種ごとに「ここから先には自生しない」 という境界線が引かれており、 これが地域判断の最強の手がかりになる。
- エゾマツ・トドマツの南限: 北海道と本州を分ける津軽海峡。 本州側にはほぼ来ない。
- ハマナス南限: 鳥取砂丘 (日本海側) / 茨城以北 (太平洋側)。 暖かい海岸にはない。
- シラカバの南限ライン: 本州では福井・岐阜・静岡より北の標高600m以上のみ。 平地では北海道だけ。
- ハイマツ下限: 森林限界 (標高2500m前後)。 ここから上にしか生えない。
- ブナの北限: 北海道渡島半島の黒松内 (国の天然記念物)。 南限: 鹿児島県大隅半島の高隈山。
- ヒバ (ヒノキアスナロ) の分布: 青森下北 + 石川能登 という飛び地。 「日本海側の冷涼で雪深い場所」 に偏る。
- カラマツの自生地: 中部山岳 (長野中心) のみ。 戦後の北海道植林は人工。
- ユキツバキの分布: 豪雪地帯 (新潟・福島会津・北陸) のみ。 雪の積もらない太平洋側にはない。
- モウソウチクの太い竹林帯: 京都・関西。 関東以北ではこの太さの竹林はまず見られない。
- アカマツ二次林の銘産地: 中国地方 (岡山・山口・鳥取)。 マツタケ採集の中心地。
- スギの自生南限: 沖縄本島北部 (国頭) のごく一部のみ。 沖縄本土全体にはほぼ自生しない。
- ヒノキの南限: 屋久島まで。 沖縄本島以南にはない。
- アコウの北限: 紀伊半島南端・兵庫淡路島南部。 本土ではここが「南国っぽい樹形」 の境界。
- ガジュマル北限: 屋久島・種子島まで。 本州はもちろん九州本土にも自生しない。
- マングローブ (メヒルギ) 北限: 鹿児島市喜入。 世界最北のマングローブ林。
- ハナノキ自生地: 愛知・岐阜・長野の県境のごく狭い湿地のみ。 国内自生は本当にここだけ。
- ダイセンキャラボク: 鳥取県大山の山頂部のみ。 標高1000m以上の高山型変種。
地域判断
GeoGuesser 用の手がかりとして、 「この樹木を見たらここ」 のまとめ:
- 北海道: エゾマツ・トドマツ (針葉樹林帯)、 ナナカマド (街路樹)、 ハマナス (海岸)、 ライラック (札幌の街路樹)、 シラカバ (低地でも見える)、 カラマツ植林
- 東北日本海側: ブナ (白神山地)、 ヒバ (青森下北はヒノキアスナロの天然林)、 ハマナス (砂浜)
- 新潟・北陸日本海側: ユキツバキ (豪雪地帯の里山)、 アテ (能登半島)
- 信州 (長野): カラマツ純林、 シラカバ高原 (軽井沢・霧ヶ峰)、 ハナノキ自生地 (中津川)
- 高山帯 (中部山岳・北アルプス): ハイマツ (森林限界)
- 東海 (愛知・岐阜県境): ハナノキ (自生地はごく狭い)
- 京都・関西: モウソウチクの太い竹林 (嵐山・鞍馬)
- 紀州 (和歌山): ウバメガシ (備長炭の原料、 海岸の森)
- 中国 (鳥取大山山頂): ダイセンキャラボク
- 中国地方の内陸: アカマツ二次林 (岡山・山口の銘産地、 マツタケ)
- 四国 (香川小豆島): オリーブ並木
- 四国 (徳島・高知): ヤマモモの街路樹・里山
- 南九州 (鹿児島大隅): クスノキ巨木 (蒲生の大楠は日本一)、 ブナ南限
- 西日本〜九州の照葉樹林: タブノキ・スダジイの巨木 (鎮守の森)
- 九州南部・四国南岸の海岸: アコウ (ガジュマル似の本土北限種)
- 沖縄本土: リュウキュウマツ・フクギ屋敷林
- 奄美・沖縄・西表: ガジュマル・ヒカゲヘゴ
- 南西諸島の河口: マングローブ
- 鹿児島市喜入: 世界最北のマングローブ林
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データソース・分布マップ
- 樹種の選定・分布データ: Wikipedia 各記事、 林野庁「分布状況」 シリーズ、 環境省「植生調査」、 全国知事会「都道府県シンボル」 など
- 取り上げた28種は、 47都道府県の県木 47種 と 各種の自生分布を照らし合わせ、 「ほぼその地域でしか見られない」 または 「特定地方の景観の主役」 のいずれかに当てはまるものを厳選 (全国分散型のスギ・ヒノキ・ケヤキ・イチョウ・サクラ・ハナミズキなどは除外)
- 分布マップ (俯瞰1枚+各樹種27枚) は当方が47県+北海道のタイル方式で作成した簡易図 (CC BY 4.0 で本記事と同条件)
画像クレジット
本記事で使用している写真はすべて Wikimedia Commons より引用しています。 ファイル名のリンクから元の File: ページにアクセスでき、 撮影者・元解像度・ライセンス全文を確認できます。 各画像は250pxサムネイル版を使用しています (派生物としての扱い)。
| # | 樹種 | 撮影者 | ライセンス | 元ファイル |
|---|---|---|---|---|
| 1 | エゾマツ | Inti-sol | CC BY-SA 3.0 | Picea jezoensis.JPG |
| 2 | トドマツ | 663highland | CC BY-SA 3.0 / CC BY 2.5 | Shiretoko Goko Lakes Sanko02s3.jpg |
| 3 | ナナカマド | Mintleaf | Public Domain | Nanakamado tree.jpg |
| 4 | ハマナス | Qwert1234 | CC BY-SA 3.0 | Rosa rugosa Tokyo.JPG |
| 5 | ライラック | John O'Neill (Jjron) | CC BY-SA 3.0 | Lilac Flower&Leaves, SC, Vic, 13.10.2007.jpg |
| 6 | シラカバ | northofsweden (via Flickr) | CC BY 2.0 | Birches in a summer meadow.jpg |
| 7 | カラマツ | Inti-sol | CC BY-SA 3.0 | Larix leptolepis2.JPG |
| 8 | ハイマツ | Inti-sol | CC BY-SA 3.0 | Pinus pumila1.JPG |
| 9 | ブナ | Nihongo1234 | CC BY-SA 4.0 | Bijinbayashi means beautiful forest.jpg |
| 10 | ヒバ/アテ (ヒノキアスナロ) | Krzysztof Ziarnek (Kenraiz) | CC BY-SA 4.0 | Thujopsis dolabrata kz06.jpg |
| 11 | ユキツバキ | Qwert1234 | CC BY-SA 3.0 | Camellia japonica var. decumbens 2.JPG |
| 12 | ハナノキ | Kazunari Abe | CC BY-SA 3.0 | Acer pycnanthum.JPG |
| 13 | ウバメガシ | Asturio Cantabrio | CC BY-SA 4.0 | Morozaki Hazu-jinja ac (5).jpg.jpg) |
| 14 | モウソウチク | Pekachu | CC BY-SA 4.0 | Roots of Phyllostachys edulis shoot.jpg |
| 15 | ダイセンキャラボク | あおもりくま (Aomorikuma) | CC BY-SA 4.0 | Taxus cuspidata IMG 4635.jpg |
| 16 | アカマツ | Joka2000 (via Flickr) | CC BY 2.0 | Pinus densiflora Towada.jpg |
| 17 | オリーブ | Tomascastelazo | CC BY-SA 3.0 | Olea europaea subsp europaeaOliveTree.jpg |
| 18 | ヤマモモ | Uncle Carl (カールおじさん) | CC BY-SA 3.0 | W yamamomo4061.jpg |
| 19 | 蒲生のクス | Tam0031 | CC BY-SA 3.0 | Big Japanese cinnamon Kamo hachiman shrine.jpg |
| 20 | アコウ | OpenCage | CC BY-SA 2.5 | Ficus superba var. japonica by OpenCage.jpg |
| 21 | タブノキ | Gondahara | CC BY-SA 3.0 | M thunbergii.JPG |
| 22 | スダジイ | KENPEI | CC BY-SA 3.0 | Castanopsis sieboldii2.jpg |
| 23 | リュウキュウマツ | Tzuhsun Hsu | CC BY-SA 2.0 | Pinus luchuensis Iriomote Jima 1.jpg |
| 24 | フクギ | cyawan | CC BY 2.0 | Fukugi Path Motobu.jpg |
| 25 | ガジュマル | Frank Vincentz | CC BY-SA 3.0 | Ficus microcarpa - La Gomera 01.jpg |
| 26 | ヒカゲヘゴ | Paipateroma | CC BY 3.0 | Cyathea lepifera Hikagehego.jpg |
| 27 | マングローブ | Babi Hijau | Public Domain | Mangrove of Miyara River.jpg |
ライセンスについて
- CC BY (Attribution): 撮影者を明示すれば自由に利用・改変・再配布可能
- CC BY-SA (Attribution-ShareAlike): 上記に加え、 派生物は同じ (または互換性のある) ライセンスで公開する必要があります。 本記事内の写真利用部分は元画像と同じ CC BY-SA で利用しています
- Public Domain: 著作権が放棄されており、 制約なく利用可能
各ライセンスの詳細は Creative Commons 公式 (CC BY 2.0 / CC BY-SA 3.0 / CC BY-SA 4.0 ほか) をご参照ください。